こども図書館ほたる
図書館、リノベーション
建築地:岡山県赤磐市
木造2階建て
延べ面積 482.24㎡
明治43年に岡山県久米南町(誕生寺)に建てられ、昭和48年に現在の敷地に移築された旧赤坂尋常高等小学校の活用・リノベーションプロジェクトである。建物の設計は、福島県出身で岡山県に赴任し活躍した技師、江川三郎八である。江川は岡山県内に数多くの擬洋風建築を手がけ、国の指定重要文化財となっている旧遷喬小学校など、現存する建物は指定文化財や登録有形文化財となっており、この建物も2018年に江川式建築として登録有形文化財になっている。
私たちがこの建物に出会ったのは、解体話が持ち上がり、その後建物の所有者となったクライアントから、後世に残せないかとクライアントから相談された2015年だった。市街化調整区域に建ち、歴史的建造物であり、移築時に何れの申請もなかったことから、管轄行政の担当課に幾度も協議に行くが、事例のないこともあり、建物の特徴を生かした活用が見いだせられずにいた。
建物が健全であれば、いつか活用の道が見えるだろうと、一部破損していた階段室の小屋組の修繕や、各地の活用された歴史建造物の事例などの情報収集などを行っていた。 クライアントは、ネパールで「美しい村に図書館を」というプロジェクトを行っており、この建物で子供のための図書館にできないかと連絡があった。早速、既存不適格調書を作成するための実測調査を行い、行政との協議を始めた。市街化調整区域内の私設図書館は事例がないことから、協議や審査、確認申請に長い時間を要したが、2022年の11月に着工2023年の7月に竣工することができた。
1階は図書館のエントランスと事務所であり、元講堂だった2階が図書館になっている。図書館部分の家具やインテリアはクライアントによるものである。
リノベーションの内容は主に構造補強と窓廻りと内部空間である。まず構造補強では、1階の壁は垂れ壁も含めあるものはすべて構造要素して活用した。2階は大空間の2/3あたりに小屋まで達する耐力壁を設けた。ここにはクライアントの繋がりで猪熊弦一郎氏の母校から寄贈された壁画の模写を飾るために既存天井板を一部切り抜いて納めている。
登録有形文化財であり、オリジナルの外観を触りたくなかったので、窓廻りの改修は内部から行い、居室は2重窓としている。内部インテリアはオリジナルをなるべく残し、断熱のために新設した壁も既存を尊重し、使える古材などは再利用している。 長く地域の方に愛される建物であってほしいと願っている。
こども図書館ほたるホームページ:https://kodomohotaru.com/
構造設計:シマムラ建築工房
(photo by 後藤健治)